株式会社 三越伊勢丹ホールディングス

株式会社三越伊勢丹ホールディングス様部課長層向けに「明日から実務で使えるデータ分析研修」を実施し、これに続く「実務に定着させるフォローアップサポート」もさせて頂きました。

柳執行役員との対談の中で、同社の営業政策に関する現在の課題とデータに基づいた取り組みなどについてお伺いしました。


(1)現在の事業の課題について

柏木 今の現状と、今後どのようなところに力を入れていきたいか、もしくは今見えているビジネス全体としての課題はどこにありますか?

img_voice03-01柳執行役員(以下、柳様) 百貨店の存在価値とか市場における存在意義というものが、年々再々薄れてきているという、非常に大きな危機感を持っています。お客様のチャネルの選び方が非常に多様化して、一人のお客様にいくつもの顔が出てきています。今までであれば、買い物するならデパートで、日常の食材は近くのスーパーマーケットでといった感じで、ある人を例にとると、チャネルがある程度想像できました。でも現在はそれが非常に多様化してしまい、アイテムによってチャネルを選んでいると言いますか、いろいろな部分でお客様固有の使い方というのが生まれてきているのです。例えばどういう食料品はここで買うというポイントが、お客様各々でいろいろな形に組み合わされて複雑化しています。これを組み合わせて、一番重なりが大きいところから優先的に重要なオムニチャネルとして取り組むべきだと考えています。
お客様との接点を効果的に増やしていく事を重要な戦略としてとらえていますが、どうすれば最も効果的な価値の提案ができるかということを、十分につかみ切れていないということが最大の課題になっています。

柏木 それだけ昔に比べてお客様が多様化しているということですね。

柳様 確実にそうですね。もうひとつは、百貨店というのは今まで市場の中で一番富裕層が集まるところという意味合いで存在してきましたが、既にその基盤が崩れてしまいました。にもかかわらず、今社内にいる人間が今まで通りの成功体験をどこか引きずっています。この成功体験から抜けきれないので、どうしても今までの百貨店事業としての枠組みの中から発想が外に向かないわけです。となると、戦略の幅が非常に限定されてくる。おそらくこれが、百貨店がどんどん市場から置いてきぼりを食う最大の原因ではないかと思うのです。

柏木 なるほど。その新しい今までにないものを思いつきでやっても効率が悪いですし、外れる確率も高いので、そこをできるだけ客観的にシステマチックにやるべきだと、そういうことですね。

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柳様 今、営業政策部という立場で会社の組織や動きを見たときの最大の弱点はやはりマーケティングだと感じています。このマーケティングという概念が、会社の中で定まっていません。百貨店として、あるいは三越伊勢丹としてのマーケティングはかくあるべき、という概念が定まっていないために、本当にダブりと抜けモレが見えていないところに問題があります。一人一人がマーケターとしての感覚を持った仕事ができない限り、まさに先生のおっしゃる平面的な現状分析というところから絶対に抜けきれないと思いますね。

柏木 そのマーケティングの概念というのは、必ずしも一つの商品の領域だけに限らないで、店舗からビジネス全体ですね。

柳様 ビジネス全体ですね。それを語るときに、百貨店業、特に三越伊勢丹グループは店頭にすべての答えがあると、これは間違っていないと思うのです。

したがって、現場のセールスマネージャーやバイヤーが一人一人の店頭マーケターとしてやってきたので、店頭の声からの気づきなどはあるのです。でもそれだけではお客様のリクエスト、百貨店に求めているものがもう見えなくなってしまっているという気がします。

今まではそこまで苦労しなくてもある程度パターンがあったのですが、そのパターンが変わってきて見えなくなってきているということですね。

(2)業務にデータを活用することについて

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柏木 社内外のいろいろなデータや数字を使うと、今のような課題に対して、もしくはお客様に対してどのようなメリットが得られるという期待やお考えをお持ちですか。

柳様 まさに今、データの見方を変えて、組み立て方を変えて、新しく何かが生まれ出るはずなのですね。お客様に対して新しい発想をトライアルとして実施し、検証はできると思うのです。1割でもその中でいいものが、あるいはお客様の要望に応えられるものがあるとしたら、これは確実に成功パターンの一つとして成長性があると思うので、それによってお客様の満足度が上がるのではないかと。ひとことで言えば、さすが三越伊勢丹ね、と言われることになるのかなと思います。

柏木 その打率を上げるために、できるだけ思い付きではなくて客観的に今何が起こっていてお客様はどう動いているかということを、もっと打率を上げたいということですね。
では今の現状に目を向けると、今打率を上げたいということに対して、どのくらいできていると言えますでしょうか。

柳様 それは、ほぼゼロパーセントだと。

柏木 本当ですか。今すでに情報とかデータとかは社外にも社内にもあると思うのですが、十分有効に使えているかというと、課題としてはまだまだあるということでしょうか。

柳様 ほとんど10年前とスキルや活用の仕方も変わっていないと思います。

店頭のマーケティングに定性の情報を加味したうえで、もう一段上の三次元的な定量分析ができれば、先生がよくおっしゃる、これは何によって売れないのか売れるのかという仮説の精度が上がるのではないかと。ということは先ほどの打率を上げる非常に大きな武器になるのではないかと思っています。

柏木 それを今、できていない時の一番のネックになっているハードルというのは何なのでしょう。

柳様 おそらく、そういう目をもって仕事をしていなかったことと、そのアプローチがあるということすら我々がわかっていないということですね。いわゆる非常に平面的で、先ほど言った業務フローがずっと伝承されていますから、それ以上の精度が上がることがないと。商品的なこと、日常の業務フロー、広告の評価など、そういうことが進歩しなかった理由もそこにあったかと思います。柏木先生のこの分析は、実はメンバーに非常に評判がよいのです。

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