DXは既存業務のデジタル化のことではない
DXとは『かたちが跡形もなくすっかり変わること』であり、『企業、組織のあり方そのものをデジタル化のロジックで問うこと』。
これは先日の朝日新聞に掲載された書評の抜粋です。
ここで言わんとすることは、日産で「ビジネス・トランスフォーメーション(BX)」の部署にいた私にはよくわかります。
そこでは(既存業務の)”改善”と”ブレイクスルー(改革)”とが明確に区別され、後者の実現がタスクでした。前者の改善をやろうとすると、「我々がやるのは”トランスフォーメーション(改革)”であり、それ(改善)は現場でやってもらえばよい」という指摘が入ってストップさせられました。
同様に、既存アナログ業務のデジタル化は”トランスフォーメーション”とは呼べないのでDXではないのですが、残念ながら現実にはそこを目指してDXと呼んでいるケースが多いのかと感じています。
この理屈で言えば、(良し悪しは別として)「自治体DX」という概念は成立しないのかもしれません。行政業務は法律に基づいて行われ、それを跡形もなく変えたり、組織のあり方そのものを問い直すことは、今の法体系では現実的に不可能だからです。
もちろん”行政IT化”は進めるべきだと思いますが、あくまでそれはDXとは別物で、これまでもIT化の必要性はずっと言われ続けていました。
DXとは?という本質が宙に浮いてしまっているまま言葉だけが独り歩きしている状況です。「データサイエンスって何?」という曖昧な(もしくは非現実的な理想論の)まま、言葉だけが色々なところで都合よく使われているのと同じ状況なのかなと思いました。
物事は正しい目的と正しいやり方でやらないと、結果が出ません。